秀808の平凡日誌

第3作『祖なる者』

序章

 ガディウス大砂漠/デフヒルズ北側に存在する名もない崩れた塔。

 その頂上にある3体の『龍』を司っているであろう彫像。

 その付近から、どこからともなく声が聞こえる。

「…世界ハ回ッテイク、音モ無ク、希望モ無ク、我、蘇リ」

 三頭の竜が風化した岩のように崩れた、土煙を上げながら落ちていく。

 足が崩れる、顔が落ちる。バラバラに崩される三頭の彫像。

「世界ハマタ我々ノモノ………」

 崩れた岩が集まり、一頭の龍を作り上げた。

 真っ白な色に血を意味するような真っ赤な首もと、大きく広げられる翼。

「仲間達ヨ、今コソ2000年ノ封印ノ鎖ヲ解キ放ツノダ!!」

 真っ白な身体が2000年前の綺麗な身体へと戻っていく。

 真っ白な身体に、二本の角。

 体が復活するのを待っていたかのように、近くの高台から1人の人間が飛び降りた。

 普通の人間が降りたら、まず即死するような高さだ。無事ではすまない。

 だが、降りた瞬間、背中から黒い龍の翼のようなものが生え、羽ばたきながらゆっくりと下降していく。

 人間ではない、『龍人』と呼ばれる数少ない種族の末裔。

 そいつが地に降りたのを確認すると、その白き龍は、言い放つ。

「我ヲ封印シタ人間達ヲ滅ボスノダ、スウォームヨ。」

 そして、スウォームというらしい龍人は、頭を下げ、言った。

「…承知シマシタ、祖龍様。」

 



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